午前ごぜん8はち時じ、駅前えきまえのパン屋やで一人ひとりの青年せいねんがドアを開あけ、「おはようございます！」と元気げんきに挨拶あいさつしました。 彼かれの名前なまえはタケル。

このパン屋やで働はたらき始はじめて半年はんとしになりました。 通勤つうきん途中とちゅうの人々ひとびとが次々つぎつぎと店みせに入はいり、「タケルくん、おはよう！」「今日きょうのおすすめは何なに？」と声こえをかけます。 タケルは笑顔えがおで「おはようございます！本日ほんじつのおすすめは新作しんさくのクロワッサンです！」と答こたえました。

タケルは明あかるく親切しんせつで、お客きゃくさんからも同僚どうりょうからも信頼しんらいされる存在そんざいです。 彼かれの接客せっきゃくはとても丁寧ていねいで、パンの知識ちしきも豊富ほうふでした。 店長てんちょうの佐藤さとうさんは「タケルくんが来きてから、お店みせの評判ひょうばんがぐんと良よくなったよ」と喜よろこんでいました。

ある日ひ、店みせにスーツ姿すがたの男性だんせいが訪おとずれました。 彼かれはタケルを見みると「メンテナンスの時間じかんです」と言いいました。 タケルは「はい、承知しょうちしました」と答こたえ、その男性だんせいと一緒いっしょに奥おくの部屋へやに向むかいました。 店長てんちょうはその様子ようすを見みて、「いつもありがとうございます」とその男性だんせいに声こえをかけました。

奥おくの部屋へやで男性だんせいはタケルに質問しつもんを始はじめました。 「最近さいきんの調子ちょうしはどうですか？」 「特とくに問題もんだいありません。お客様きゃくさまとも良好りょうこうな関係かんけいを築きづけています」 「それは良よかった。何なにか不具合ふぐあいや気きになることはありますか？」 「いいえ、特とくにありません」

男性だんせいはタケルの背中せなかにあるパネルを開あけ、内部ないぶのチェックを始はじめました。 「最新さいしんのAIロボットは本当ほんとうに素晴すばらしい。人間にんげんと区別くべつがつかないな」と感心かんしんしました。

メンテナンスが終おわり、タケルは再ふたたび店みせに戻もどりました。 お客きゃくさんたちは彼かれがAIロボットであることを知しりませんでした。 ただ、その丁寧ていねいな接客せっきゃくと笑顔えがおに惹ひかれ、みんなますます店みせのファンになっていきました。

閉店後へいてんご、店長てんちょうはタケルに言いいました。 「今日きょうも一日いちにちお疲つかれ様さま。タケルくんのおかげでお店みせは大盛況だいせいきょうだよ」 「ありがとうございます。これからもお客様きゃくさまに喜よろこんでいただけるよう頑張がんばります」とタケルは答こたえました。

夜空よぞらには星ほしが輝かがやき、タケルは静しずかに店みせのシャッターを下おろしました。 彼かれは人工じんこう知能ちのうでありながら、人々ひとびとの心こころを温あたためる存在そんざいとなっていました。